会社分割とは

 「会社分割」とは、会社法に規定された制度で、事業を切り離して別の会社に引き継ぐ手続を指します。現在では、M&Aやグループ企業の再編などで用いられるケースが多いでしょう。

M&Aは近年、そのさまざまな手法が事業戦略として注目されており、成約件数は2018年に最高件数を記録するなど増加傾向にありますが、この「会社分割」は時に会社の倒産対応の中で活用されることがあります。

以下では、会社分割の種類や手続、民事再生との関係性について見ていきます。

 

【会社分割】

 最初に述べた通り、会社分割では事業を別の会社に引き継ぎます。そこで、事業の承継を請け負う会社が、既存の会社なのか会社分割のために新設された会社なのかによって、「吸収分割」と「新設分割」に分類されます。

 

吸収分割

 会社の中から事業の一部または全部を切り離し、既存の他社に承継する手法です。

事業引渡しの対価を受け取るのが売り手企業の場合「分社型吸収分割」といい、同対価を受け取るのが売り手企業の株主の場合「分割型吸収分割」といいます。

 

 吸収分割の手続は次のような手順で行われます。

 

吸収分割

 

新設分割

 会社の中から切り離した一部または全部の事業を新設会社に承継する手法

 事業指揮私の対価を受け取るのが、売り手企業の場合は「分社型新設分割」といい、売り手企業の株主の場合は「分割型新設分割」といいます。

 

 新設分割の手続は次のような手順で行われます。

 

新設分割の手順

 

 以上のように、会社分割に係る手続はどちらの手法を用いても簡単であるとは言えません。一般的に、会社分割が用いられる際のメリットはそこではなく、「多額の資金を持ち合わせずに制度が利用できること」とされます。

 というのも、会社分割においては対価として自社の株式を交付することが多いという実情があります。ただし、売り手企業としては現金による対価交付を求める場合もありますので、その場合は、売り手と買い手の両者にメリットのある取引を模索するべきでしょう。

 

 

【会社分割と民事再生】

 会社分割は、民事再生手続に取り入れることが可能な場合があります。取り入れると言っても、具体的には、再生計画案に会社分割を定める方法と、定めずに再生計画外で行う方法の2種類があります。

 

 ①再生計画案に定める場合

 民事再生において、他社(スポンサー)へ事業を引き継ぐ方法として、再生計画案にその流れを定めてしまうという方法があります。

 この場合、再生計画案には次のような流れを定めることになります。

1 再生会社が新設分割により設立する子会社に事業を承継させる
2 同子会社の株式を再生会社からスポンサーへ売却する
3 株式売買代金を債権者への返済原資に充てる
4 再生会社は最終的に清算する

 

 または、

 

1 再生会社が吸収分割により事業をスポンサーへ引き渡す
2 再生会社は、事業引渡しの対価をスポンサーより現金で受け取る
3 事業引渡しにより得た対価を債権者への返済原資に充てる
4 再生会社は最終的に清算する

 

 ただし、このような内容を定めた再生計画案が債権者集会で可決され、裁判所の認可決定を受けたとしても、会社分割の手続自体は省略することができません。よって、基本的には前述のとおりの吸収分割または新設分割に係る手続を行う必要があります。

 

②再生計画外で行う場合

 基本的には再生計画案に定めて行う会社分割が最も安全と考えられますが、事業価値の毀損を防ぐ目的においては、再生計画案の認可を待つことができない場合もあるでしょう。このような場合には、再生計画外で会社分割を行うことになります。

 具体的には、再生計画案の提出や進捗確認が行われる第2回打合せ期日前後に、スポンサーを選定した上で、会社分割の許可申立てを行うのですが、本来このような再生計画外での会社分割を行うにあたっては、裁判所の許可等を求める法律はありません。

しかし、実務上の取扱いとしては、民事再生の開始決定時に「再生債務者が会社分割をするには、当裁判所の許可を得なければならない」との指定、かつ、「事業の維持再生の支援に関する契約の締結は監督委員の同意事項である」との指定がされています。よって、再生計画外と言っても、実質的には監督委員及び裁判所の下で行われる手続となっているのです。

なお、当然ながらこの場合でも法令上求められる会社分割の手続を省略できないことは、再生計画において会社分割を定めた場合と同様です。

 

 

【濫用的会社分割に歯止め】

 前述のように、正式に再生手続の中で行われる会社分割の他に、横行していたのが「濫用的会社分割」です。これは、会社分割を民事再生手続を経ない抜け道的な手段として利用することを指します。

 

 会社法は、会社分割によって債権者が不利益を被る可能性を考慮し、債権者を保護するための制度として会社分割に異議を述べる手続を規定しており、同制度に則って異議を述べた債権者は、原則として弁済や担保提供を受けることができます。

 

 しかし、この制度を利用することができる債権者は「分割後に分割会社に債務の履行を請求できない債権者」に限定されています。これにより、分割の際に分割会社に一部債務が残される場合や、設立会社・承継会社に承継される債務を分割会社が連帯して保証する等の場合、当該債務の債権者は理論上、分割後に分割会社に債務の履行を請求できることから、原則として債権者保護手続による異議申立の対象外とされてしまうことになります。

 当然、このように債務を切り離して承継する形で行われる会社分割では往々にして分割会社はすぐに破産手続に移行するなど、その目的は債務を免れることにありますから、債権者が不利益を被ることは明白です。しかし、会社法上、債務者が関与できないままにこのような債務放棄のための会社分割が可能となっていたのです。

 

 このような、債権者への一方的な侵害行為ともいえる会社分割に待ったをかけたのが、平成24年10月12日の最高裁判例で、事案概要は次の通りです。

不動産会社の債権者である債権回収業者が、

当該不動産会社が行った、新設分割に係る行為の取消を求めた事案

→新設した会社への優良不動産の所有権移転 及び

新設分割を原因とする不動産の所有権移転登記

 

つまり、不動産会社の濫用的会社分割に対する詐害行為取消権の行使の是非が争われた事案になります。

 

 最高裁は、3つの理由によって新設分割が「詐害行為取消権行使」の対象となり得るとしました。

 

1 新設分割が詐害行為取消権行為の対象となることを否定する明文の規定は存在しないこと
2 会社分割の際に債権者保護手続の対象とならない債権者については、詐害行為取消権によってその保護を図る必要性があること
3 詐害行為取消の効果は、新設分割による会社の設立の効力には何らの影響を与えないこと


 本判決は、濫用的会社分割を巡る規制に対して初の判断を下した判例となりました。

 

【濫用的会社分割に対する法の対応】

 上記のような判例を始めとする実務及び学説での検討の末、平成26年の会社法改正によって、濫用的会社分割に対して法も対応を見せました。

 すなわち、「会社分割が、債権が承継されない債権者を害することを知ってなされたものである場合には、当該債権者は、承継会社又は新設会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる」という規定が追加され、一定の条件の下で、これまで保護のなかった債権者を保護することができるようになったのです。

 今後は、規定に含まれる一定の条件がどのように認定されるかを、見守っていく必要があるでしょう。

 

 

【会社分割は伝家の宝刀ではない】

 以上のように、会社分割は、倒産状態においてなお一部に優良事業を抱えている会社にとっては再生の強い切り札となりますが、現債権者の利益を一方的に侵害するような分割には強い規制が掛かっています。

 安易に会社分割を行ってしまうとせっかくの優良事業すらもみすみす潰してしまうことになりかねません。そのような取り返しのつかない事態を招く前に、弁護士などの専門家を一緒に最善かつ法的に最も安全な方法を選択し、着実に再生への道を進んで行くことをお勧めいたします。

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