会社更生とは
「会社更生」は、業務を維持しながら債務を整理し、会社の再建を目指す「再建型」の倒産制度です。対象としては債権者・債権額共に比較的大きなケースを想定しています。
同じ再建型の倒産制度として、「民事再生」という手続がありますが、会社更生は民事再生の特別法として位置付けられており、両手続の間には適用対象や手続の方法にいくつかの違いが見られます。
以下では、民事再生との違いにも注目しつつ、会社更生について見ていきたいと思います。
【会社更生法が適用されるための条件】
会社更生の手続を利用するには、大きく3つの要件を満たす必要があります。
① 株式会社であること
会社更生法第1条は、同法の目的を次のように述べています。
「この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社(以下「会社」という。)について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とする。」
したがいまして、この制度は「株式会社」しか利用することができません。後にも触れますが、民事再生の制度は、株式会社でなくても利用することができます。
② 破産手続開始の原因となる事実の生ずる恐れがあるとき
会社更生法17条には、更生手続開始の要件が2つ明記されています。そのうちの1つ目が、「破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがあるとき」です。
破産手続開始の原因は、「支払い不能」と「債務超過」です。例えば借り入れが多くなりすぎる状況などにおいて、破産手続開始原因の生ずる恐れが認められることとなります。
③ 債務の弁済が事業の継続に著しい支障を来すこと
会社更生法17条に示されている要件の2つ目になります。条文には、
「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」とされています。例えば、会社が無理な資金集めや、偏った弁済などを繰り返して債務を弁済しようとし、本来の事業の継続ができなくなってしまう場合が、この状況にあたります。
【会社更生の手続】
会社更生の手続は厳格で複雑なものになるため、少々時間を要する手続となっていますが、主な手順は以下のとおりですので、簡単に解説をします。

1 手続開始の申立・財産保全命令
申立の要件を満たす場合には、債務者(会社)は裁判所に対して会社更生の申立を行います。
その申立てが受理されると、それ以降会社が任意に弁済を行うことができないよう、財産の保全命令とともに保全管財人が選任されます。
2 会社更生手続の開始決定 ~ 3 更生管財人の選任
申立受理から1か月程で、更生手続の開始決定が出されます。更生手続では、必ず管財人を選任する必要があるため、この決定に伴い更生管財人が選定されます。更生管財人の職務は、破産管財人や再生管財人と基本的には同様で、経営・財産管理となりますが、加えて再生会社を支援するスポンサーを探す役割も期待されます。
4 財産の評価・債権内容の確定・事業計画の構成
選任された更生管財人は、決められた期間内に会社の債権者や担保権者、株主等を集めた関係人集会や、債権者からの届出に基づいた債権調査を経て、会社財産の評価・債権内容の確定を行います。また.それらの結果を鑑みて、今後の事業計画についても検討を行うことになります。
5 更生計画案の提出
更生管財人は、4までに確定した財産や債権者の債権内容、検討した事業計画を基に、関係者集会から一定の期間内に更生計画案を提出しなくてはなりません。
この更生計画案には、利害関係人の権利の処理と会社事業の維持、再建の条件などが定められることになります。
6 更生計画案の決議
更生管財人によって作成・提出された計画案は、関係者集会によって議決されます。可決に必要な要件は以下のとおりです。
①更生債権
総議決債権額の2分の1を超える議決権者の同意
②更生担保権
・期限の猶予を定める更生計画案
総議決債権額の3分の2以上の議決権者の同意
・減免等を定める更生計画案
総議決債権額の4分の3以上の議決権者の同意
・事業の廃止を定める更生計画案
総議決債権額の10分の9以上の議決権者の同意
③株主
株主の議決件数の過半数の同意(債務超過の場合、株主の同意は不要)
7 更生計画案の認可・履行
更生計画案が可決されると、裁判所から認可決定が出されます。この認可決定を受けると、更生計画が効力を持ち、以後は同計画の履行によって債務を弁済していくこととなります。
8 更生手続の終結
会社の債務の弁済が終了し又は終了することが確実であると裁判所が認めた場合には、裁判所により終結決定が出され、更生手続が終結となります。
【民事再生と会社更生の比較】
前述の通り、会社更生は民事再生と同様「再建型」の倒産対応であり、類似点も見受けられますが、民事再生と比較して厳格な手続となっています。ここで、会社更生と民事再生について簡単に比較しておきます。
|
会社更生 |
民事再生 |
適用対象 |
株式会社のみ |
法人・個人を問わず全ての債務者 |
経営権 |
原則、全員退任 |
現経営者の継続が可能 |
管財人 |
必ず選任 |
原則、なし |
担保権の取扱い |
会社更生手続が開始されると 計画認可後を含め実行不可 |
例外を除き、実行可能 |
株主 |
既存の株主は権利を喪失 |
株主の権利は維持 |
租税 |
返済してはならない |
随時返済 |
計画案の可決 |
更生債権者・更生担保債権者・株主の同意を要する |
債権者の同意のみ |
手続期間 |
長期(認可まで1~3年) |
短期(認可まで約半年) |
【会社更生のメリット・デメリット】
メリット
① 担保権等に制限をかけることができる
民事再生では制限をかけることができない「担保権」「租税」等の債権についても、基本的には更生手続に巻き込むことができるため、権利の行使を大きく制限することができます。
よって、会社の再建に不可欠な財産に担保権が設定されている場合には、会社更生法を選択することで、担保権者とも権利を整理することができ、よりスムーズに再建を図ることができます。
② 大幅な組織変更ができる
更生計画内では、合併・会社分割・定款変更・取締役変更などの組織再編行為を行うことができます。再建を図るために係る行為が必要と考えられる場合には、それらを含めた更生計画を立てられることが有効に働きます。
デメリット
① 時間がかかる
会社更生手続は、大規模な会社の手続が想定されており、中小企業の手続を想定している民事再生と比較すると手続には時間を要する傾向にあります。
② 費用がかかる
会社更生手続を申し立てる際には、裁判所に予納金を納める必要があります。会社規模によっては数千万円の予納金が必要になる場合もあります。