破産になる原因

 日本では,倒産する法人数は減少傾向にあったものの,2019年には11年ぶりに件数で前年を上回り約8,300件の倒産が確認されています。同件数はあくまで倒産の件数ですが,多くの法人が経営状況の悪化に見舞われたことは事実です。

 法人が,倒産しなければならない原因には,どのようなものがあるのでしょうか,またどの程度の経営状況の悪化が認められれば倒産手続の中でも「破産」という方法を適用することができるのでしょうか。

 

【倒産になる原因】 

 法人が倒産に至る事情としては,様々なものが考えられます。

 

① 深刻な人材不足

 企業規模別の求人倍率を見てみると,従業員数が300人以上の企業では大方2倍以内に収まっているのに比べ,従業員数が300人未満の中小企業は約10倍と,中小企業を取り巻く厳しい採用事情が伺えます。

 また,新卒社員を採用しても教育への投資が十分に行えない中小企業では,即戦力となる人材を獲得するための中途採用が増える傾向にあります。しかし,転職希望者のうち一定数はやはり転職を繰り返す流動的な人材であることは否めません。すると,場合によってはいつまでたっても人材が安定せず,業績の不安定に繋がってしまいます。

 更に,少ない人材で業務を回している企業では,一人が担う業務や売上の割合が多くなっており,ひとたび人材の流出が起こると穴埋めが効かず途端に経営状況が悪化してしまうことも少なくないのです。このように,特に人材を育てていく体力のない中小企業では人材不足が業績に直結し,倒産の原因となってしまうのです。

 

② 債権回収の失敗

 売上不振や債務超過よりも不意打ちの打撃となり得る資金面の原因が,債権回収の失敗,「貸し倒れ」です。売掛金による取引を行っている企業は,従業員が5人以下の企業でも約91%,6人以上の企業では約98%に上っています。

このように,ほとんどの企業が「掛け取引」を行っているわけですが,仮にこの売掛金が貸し倒れとなった場合,その損失を吸収する体力のない中小企業では一度の貸し倒れが死活問題となります。貸し倒れによってキャッシュが回らなくなり,それをきっかけに銀行からも手を引かれてしまった場合,資金調達の手段を失った企業は倒産に追い込まれるということになってしまうのです。

 

③ 過剰在庫による黒字倒産

 会計上,在庫を仕入れた際に要した費用は売り上げに繋がった時点まで計上されません。一方で,仕入れた在庫自体は資産として扱われます。これによると,売れない在庫を大量に抱えていても帳簿上は黒字を維持することができます。

 しかし,実際には在庫を捌かない限り利益は上がらず,仕入れに要した出費によって手元の現金は減っている状態が続きます。経営においては,現金(キャッシュ)が必要な場面が必ずありますので,これを繰り返すと帳簿上は黒字でも,過剰な在庫を抱えたまま経営は既に立ち行かなくなっているという,黒字倒産に陥ってしまうのです。

 

【法律上の破産原因】

 以上のように,法人が倒産手続を行わなくてはならなくなる具体的な事情はいくつか考えられますが,破産法では,破産手続開始の原因となる法定の事実が「破産原因」として定められています。

 債務者が法人の場合の破産原因は「支払不能」と「債務超過」の2つです。

 

〖支払不能〗

 支払不能とは,「債務者が,①支払能力を欠くために,②その債務のうち弁済期にあるものにつき,③一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます。

 

 ① 支払能力 … 単純な財産状況のみならず,信用等による収入も含む総合判断になります。

 ② 弁済期にあるもの … 将来,弁済期が訪れた際に弁済できないことが確実であっても,弁済期の訪れていない債務に関しては支払不能の判断はされません。

 ③ 一般的かつ継続的 … 総債務について,一時的な支払中止や手元不如意ではなく弁済できない状態が客観的に継続している必要があります。

 

 また,破産原因である支払不能を推定させる事実として,法律は「支払停止」を定めています。

 この支払停止は,弁済能力が無いため弁済期の到来した債務について弁済ができないことを,外部に表示する債務者の行動です。例えば,債権者に対する通知や告知がこれに該当しますが,多くは,手形不渡りをもって支払停止と認定されています。

 

〖債務超過〗

 債務超過とは,「債務者が,その債務につき,その財産をもって完済することができない状態」をいいます。

 この原因においては,判断基準とされるのは財産のみであり,消極財産にはまだ弁済期が到来していない債務も含まれるので,この点において支払不能とは異なります。

 

〖破産障害事由〗

 破産手続開始決定の実態的要件には,「破産障害事由がないこと」という消極的要件があります。つまり,上記の破産原因を備えていたとしても,次に破産障害事由がある場合には破産手続を行うことができないということになりますので,注意が必要です。

 

① 他の倒産処理手続が係属している

 破産以外の倒産手続の目的は,債務者の破産を回避して事業の再生もしくは維持更生を図ることにあります。よって,破産手続は他の倒産手続に対して劣後的地位に置かれているのです。

 これによって,破産手続が既に開始されている場合であっても,再生手続または更生手続開始の申立は認められることとなっています。

 

② 破産手続費用の予納

 破産手続の費用の予納義務は全ての申立人に課されることとなっており,費用の予納がない場合には破産手続開始決定がなされません。予納金は,破産管財人の報酬が大部分を占めますので,同人の作業量やその他破産手続に係る問題の重量によって予納金の額は変動します。一般的には,少なくとも60万円~80万円を納める必要があります。

 

③ 破産手続の濫用

 破産手続の濫用を防止するため,「不正な目的で破産手続開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき」には,破産開始決定がなされないことが定められました。

 例えば,債務者において,破産することを前提とした傲慢な経営をしていたことが認められる場合などが考えられるでしょう。また,破産手続の申立ては債権者からも行うことができますが,従来は弁済をしない債務者への嫌がらせや脅しとして債権者が破産の申立を行うケースが散見されていました。このような事態を立法的に解決しようとした要件でもあります。

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